つながりの場になっていたんだと思った瞬間
新宿ゴールデン街 「流民」
松本進さん
へこんだときに来てくれるお客さん
嫌なことがあった日に、ふらっと立ち寄ってくれるお客さん。うちの店をどう思ってくれているのかはわからないですけど、そういう人の居場所であれたらいいなと思います。
東北の震災があった次の日、店を開けることになって、掃除していたらオープン前に満席になったんです。
「みんなこういうときに、うちに来てくれるのか」。
お店に足を運んでくれたことに感じるものがありました。お酒やおいしいものを出すだけではなく、つながりの場となっていたんだなと思い、そういう面で仕事の意識が変わりました。
もちろん楽しい日は、一緒にお酒を飲んで盛り上がります。お客さん同士も仲よくなって、いつの間にか「え? 最近一緒にごはん食べに行ったんだ」とか「へぇ、付き合ったんだ」とかあります。たまたま、お客さん同士の気があったんでしょうね。なかには結婚する方もいて、そういう話を聞くとベタかもしれないですけど、幸せですよね。うれしいときもつらいときも含めて、お客さんにコミュニケートしていきたいです。
誰が来て、何が起こるかわからない
お店は18時から朝の5時までやっていて、基本的に、毎日誰が来るのか、何が起こるのかわかりません。いろいろな方が来てくれて、僕も面白いです。知らない世界の話や経験を聞けるのは勉強になります。
8年お店にいるので、常連さんとは一緒に歳をとっている感覚があります。大学生だった人がアラサーになり、30歳だった人がアラフォーになり。ときには「あのとき楽しかったね」と昔話に花を咲かせるのもいいですし、結婚した、子どもが生まれたとか話をしながら、これからも末永くお付き合いできればと思います。
これからも旅は続けたい
僕は25歳くらいまで、お金を貯めては旅をして、という生活をしていました。その後、東京で就職したんです。いい歳だし3年は続けようと思っていました。初めてのデスクワーク。それはそれで新鮮で楽しかったです。でも1年くらいやって、「これが本当にやりたいことなのかな?」と思い始めたんですよね。
そんなとき、足を運んだのが新宿のゴールデン街でした。数あるお店の中から直観で働きたいと思ったのが「流民」。勇気を出して扉を開けて店内に入り、店員さんとの話の流れで「働きたい」と伝えたところ、たまたま一人スタッフが辞めると聞いて、ご縁があって「流民」で働かせてもらうことになったんですよ。仕事内容も肌にあって、あのときの直観は正しかったなと思います。
「あの人、昔は旅をしていたんだよ」って言われるより、これからも旅は続けたい。長い常連さんだと、僕の旅の経験を話しつくしちゃいますし、そういった意味でも新しい刺激は必要です。
スタッフにも行きたいところに行って欲しいです。少しくらい長い休みをとっても、いない間は何とかするから。その代わり僕もタイミングを見つけて行きたいときに行くので(笑)。
来年の3月にインドネシアに日食を見に行く予定なんです。そういう目標みたいなものがあるとがんばれますよね。
自分も含め、スタッフも好きなことができる環境でありたいです。お客さんとの関係も、その方が面白くなっていくのではないでしょうかね。
インタビュー トグチダ / 撮影 北原 千恵美
新宿ゴールデン街 「流民」
オーナー
松本進さん
20代前半から資金を貯めては旅にでるという生活を送る。26歳で広告関係のライターとして企業に就職するも、1年半で退職。その後、新宿ゴールデン街のお店「流民」にて働くことに。29歳でオーナーになり、現在に至る。
流民
新宿区歌舞伎町1-1-5 明るい花園八番街
03-3203-0721
HP:http://liumin.jp
Facebook:https://www.facebook.com/148644918498775/