欲しい楽器が見つかり、お客さんの顔がパっと変わった瞬間
楽器工房キャットロック
大崎 加奈未さん
お客さんの探しものを一緒に探す
「どういう音を出したいですか?」
「どういうバンドやってるんですか?」
「どんな規模でライブやってるんですか?」
「何を楽器に求めてますか?」
ハッキリ欲しい楽器の器種が決まっているお客さんもいますが、「具体的にこれっていうのはないんだけど…」という曖昧なイメージのまま来店する方もいらっしゃいます。そういうときは、楽器の説明をするよりも、まずはその人自身のことについてどんどん質問させてもらいます。
まるで雑誌のインタビューですよね(笑)。でもみなさん、よい楽器が欲しいという想いがあるから、快く答えてくれます。どんどん質問をしていって、お客さんの欲しい楽器のイメージ像を具体的にしていきます。お客さんと一緒に一番イメージに合った楽器を探していく、という感覚ですね。
お客さんのことを深く知っていくほど、満足のいく楽器が提案できる。最終的に本当にニーズに合った楽器が見つかると、その瞬間、お客さんの顔がパッと変わるんです。「これだ!」とピンときているその表情を見ると、「見つかったんだ! よかったー!」と心底うれしいですよ。お客さんも「今日、来てよかったです」と言ってくれる。この瞬間が、今の仕事で一番うれしいですね。
お客さんに教えてもらった、
楽器が自然と売れる方法
この楽器店で働いて、もう10年になります。今でこそお客さんと一緒に楽器を探す、というスタンスで接客をしていますが、当初はどうやったら売れるかってことばかり考えていました。なんせ、全然売れませんでしたから(笑)。「このギター安いのに何で売れないんだろう? どうしよう、売らなくちゃー!」って……。でも、この思考回路が間違ってたんです。お客さんは気に入るものが見つかれば買うし、見つからなければ買わない。だから、お客さんが欲しがっているものを見つけてあげれば、自然と買ってくれますし、また来てくれる。それに気が付くまでしばらくかかりました。
この気づきは、お客さんから教えてもらったんです。何も買わないで帰っていくお客さんの「これじゃないんだよね」という去り際の一言。「そうじゃないんだよ」というご注意。たくさんのお客さんとやりとりしていく中で学ばせてもらいましたし、今もさまざまなことを毎日学ばせてもらっています。
特に年配のお客さんはすごくやさしい。趣味の楽器を買いにくる人達だから、遊び心があるし余裕もある。接客やお店のことで気になるところがあると、ストレートに注意するのではなく、ユーモアを交えてたしなめてくれます。ここは直した方がいいよ、って。本当に、日々お客さんに助けられています。
米軍基地の街・福生の音楽文化
楽器って、楽しむためのものじゃないですか。楽しむものを売っているので、お客さんと話しているのも楽しいですね。正直、仕事でつらいことってあまり思いつかないんです。お客さんが来てくれるとすごくハッピーになれるし、お客さんに「こんなの探しています」と言われると「よーし、がんばって探すぞー!」って思います。だから、身体の調子が少しくらい悪くても店に出てしまいますね(笑)。
お店のある福生という街にも魅力を感じています。米軍の横田基地が近くて音楽が盛んなんです。都心部とは少し違う趣のライブハウスやライブ喫茶がたくさんありますよ。フラリと来店して楽器をいじれるところ、ごはんを食べながらライブを見れるところ、セッションに参加できるところとか、気軽に遊べる音楽関連のお店が何十件もあります。画家とかミュージシャンとかクリエイティブな人が多く住んでいるので、いろいろな人が来店するのも面白い。そういう福生の音楽文化を毎日感じられることも、仕事が楽しい理由の一つだと思います。
インタビュー 吉田 麻葉 / 撮影 北原 千恵美
楽器工房キャットロック
大崎 加奈未さん
楽器工房キャットロックにて接客販売。オンライン店舗対応、オリジナル商品の企画も担当。開店当初からのメンバーで、「ホコリだらけだった物件の掃除や壁のペイントもしました」というコア店員。顧客は北海道から沖縄まで幅広い。
■情報リンク
楽器工房Cat Rock http://cat-rock.com/
〒197-0011
東京都福生市福生867-14-101
TEL 042-551-0052
営業時間 PM1:00~PM8:00
定休日:水曜日