空を見上げるお母さんがひとり増えた瞬間
一般社団法人気象予報士会サニーエンジェルス
山本 由佳さん
とにかく面白さ重視のお天気教室
「空を見上げるお母さんを増やそう!」
これが、私の発案で活動開始した気象予報士チーム「サニーエンジェルス」のスローガンです。私たちは、母親向けのお天気教室「さいえんすママカフェ」を全国各地で開催しています。
ママカフェで行うのは、「雨粒の形ってどんなもの?」などのお天気クイズや、防災知識、天気予報の見方、おすすめ天気予報サイト・アプリの紹介など。
目玉は、100円ショップやスーパーで簡単に手に入るものを使って行う実験です。ペットボトルで雲や雪を作ったり、漬物の容器を使って山の薄い空気を再現したり。手順は簡単ですが、見た目のインパクトは抜群。いつも客席からは「おお~!」という歓声が上がります。
難しい理論は二の次です。とにかく、来ていただいた方に楽しんでもらって、「科学ってこんなに面白い」「空や雲って眺めるときれいなんだな」と思ってもらえれば・・・と考えています。
活動の励みになるのは、なんといっても、参加者からのアンケートですね。「夕焼けを今度じっくり見てみます」「雲ってこんなにいろいろな形があるなんて知らなかった」「天気予報をちゃんと見てみます」という言葉が書かれていると、思わずガッツポーズです!
始まりは、PTAのイベント
お母さんに向けたお天気教室をやろうと考えたのは、「子どもの理科離れだけでなくお母さんの理科離れも進んでいる」という話を聞いたからです。お天気なら一番身近なサイエンスですし、普通の主婦である私がやれば、お母さんたちに気負わず参加してもらえるのではないかと考えたんです。
「お母さん向けの出前教室をやってみたいんだけど・・・」
私と同じ、主婦の気象予報士仲間に相談してみると、「いいじゃない、やってみようよ」と賛同してくれました。そこで、娘の小学校のPTAのイベントで、お天気教室を試しにやってみることに。
実験ノウハウは先輩気象予報士に教えてもらい、その実験をよりお母さんでも簡単にできるようにアレンジしました。手探りで準備を進め、ドキドキしながら本番を迎えてみたら、これがとても楽しかった!
反応も上々で、「これ、やっていけるんじゃない?」という手ごたえを感じたんですよ。
これが、私たちの活動のはじまりです。
2009年に5名で始まったサニーエンジェルスも、2015年現在で女性会員が約60名、男性を入れると全部で約150名の一大集団になりました。もちろん、会員は全員気象予報士。気象予報士の女性比率が約15%ということを考えると、サニーエンジェルスの女性比率は相当高いですよね。
仕事は任せてナンボです
私のモットーは、周りの人にどんどん任せていくこと。初めて参加する会員であっても遠慮なく仕事を振っていくので、「無茶ぶりの山本」というありがたくない称号までいただいています(笑)。
だって、おっちょこちょいな私一人じゃ限界がありますし、とても続けられないですから。皆さん、とっても優秀なのでお力を借りないとね。
依頼は基本的に断りませんし、全国どこへでも駆けつけます。それは、ひとえに会員の活動の機会を増やしたいからです。なるべく多くの会員にノウハウを伝えていきたいんですよ。
今の野望は、代表を誰かに譲ることかな。この活動を続けていくためには、代表が交代していったほうがいいと思うんですよね。私は言い出しっぺなだけですから。
活動をしていてジレンマを感じるのは、「子ども向けの教室をやってほしい」という依頼がたくさん来ることですね。もちろん、依頼にはお応えして子ども向けの教室もやりますが、本当はお母さんにこそ科学の楽しさを思い出してもらいたい。その思いは今も変わりません。
インタビュー 今井明子 / 撮影 菅井淳子
一般社団法人気象予報士会サニーエンジェルス
代表
山本 由佳さん
神奈川県出身。気象予報士。東京理科大学卒業後、メーカーでシステム設計のエンジニアとして働く。結婚を機に退職し、家事・育児に専念。2008年に気象予報士試験に合格。2010年に気象予報士仲間と「サニーエンジェルス」を立ち上げ、母親向けのお天気教室を開催している。この団体の活動は、2012年に一般社団法人日本気象予報士会石井賞を、2013年にサイエンスアゴラ賞を、2015年に一般社団法人日本気象予報士会賞と日本気象学会 2015 年度奨励賞を受賞。
一般社団法人気象予報士会サニーエンジェルス