オフィス会員に「そろそろ手狭になってきた」と言われる瞬間
株式会社 LIG
佐々木レンツさん
ここはまるで、自由な「学校」のような空間
僕らが運営するシェアオフィス&コワーキングスペース「いいオフィス」には、全体で30程度の会社が入っています。フリーランスの人を含めて、オープンスペースの会員数は50人くらい。この場所には、本当にさまざまな職業、さまざまな年齢の人が集まってきていて、そのなかで関係が生まれていく。新しい事業が立ち上がったりもします。それぞれ別の仕事をしつつも、ゆるいつながりがあるので、自由な「学校」のような雰囲気ですね。
メンバーと施設の管理を、おもに上司と僕の2人で回しています。毎日の仕事は、汚れやすい入口やキッチン、会議室の掃除をしたり、ドリンクや備品が足りているかをチェックしたり。メンバーの入金管理や、イベントの予約、受付などの業務をこなしつつ「オフィスのメンバーが困っていないか」ということにも気を配らないといけないので、わりと忙しい日々を過ごしています。
「居心地のいい場所」は人それぞれ違う
管理人の仕事は、とにかく雑用というイメージがあると思いますが、ただ「場所をきれいにしておく」だけじゃなくて「場所の雰囲気を保つ」ということが重要なんじゃないかな、と思ってます。難しいのは、居心地のいい環境は人によってまったく違うということ。静かな空間が好きな人もいれば、コミュニケーションをとりながら仕事をしたい人もいる。それは、一人ひとりと、やりとりしないとわからないことですね。
だから、新しく入ってきたメンバーの方にはわりと頻繁に話しかけます。コーヒーを入れてひと休みされているタイミングで「今、どういうお仕事されてるんですか?」「今度こういうイベントありますよ」というように。もしかしたら、うるさい奴だと思われてるかもしれませんけど(笑)、その人がこの場所に何を求めているのかを、少しでもつかみたくて。それこそ、最初の面談のときから「この人はどういう人なのかな」とこっそり観察しているフシもありますね。
あとは、仕事以外の日常も共有できるのがシェアオフィスの面白いところなので、キッチンを使って「いつもとちょっと違うこと」をしたりすることもあります。今日はたまたま卵を大量にもらったので、でっかいプリンをつくってメンバーにふるまいました。お玉でプリンをすくって、わいわいやりながら配って。こういう時間を共有すると、僕もそうですが、メンバー同士もお互いに「顔」が見えてきますよね。
メンバーの仕事がうまくいくと、
自分ごとのようにうれしい
おそらく、マンションにしろシェアオフィスにしろ、管理人っていうのは本来「空気」みたいな存在であるべきだと思うんです。目立たないけどつねにそこにいて、その人がいないと回らないというような存在。そう考えると、よくメンバーにちょっかいを出す僕は、あまり管理人らしくない存在かもしれない(笑)。
ただ、「いいオフィス」の会員さんは、僕ら管理人をコミュニティの一員のように認めてくれているところがあって、それはそれでいいことなんじゃないかと思っています。
日々のなかでうれしいと感じるのは、オフィスメンバーの仕事がうまくいっているのを実感したとき。たとえば「手狭になったので、今より広い個室を借りたいんですが」と言われることがある。何てことない業務連絡なんですが、じわっと感動しますよね。事業が軌道に乗って、社員が増えるということですから。
「お世話になりました、オフィスを構えることになったのでここを出ます」なんて言われるときは「おお!」ってなります。
管理人がメンバーの退去を喜ぶのはおかしいことかもしれないんですが、彼らが手がけている事業の成長に、少しでも貢献できたのかなと思うと、心から「よかったなあ」って感じます。
インタビュー 福島 奈美子 / 撮影 廣瀬 育子
株式会社 LIG
「いいオフィス」管理人
佐々木レンツさん
大学卒業後、工学系の大学院に進学し研究を志すも、Web制作の面白さに目覚めてフリーターの道へ。2014年よりWeb制作を手がける株式会社LIGでの勤務をスタート。同社がプロデュースする「いいオフィス」に手作りのアップルパイ持参で遊びに行ったところ「ウチに来ない?」と声をかけられたのがきっかけ。2015年3月に正式入社。現在「いいオフィス」にて管理人を務める。受付から施設の管理、月に10回以上あるイベント開催のサポート業務などをこなす。ひそかに本職DJも志している。
シェアオフィス&コワーキングスペース「いいオフィス」
住所:東京都台東区東上野2-18-7
電話:03-5812-4433
営業時間:10:00~18:00(受付は~17:00)※非会員1日利用の場合
定休日:不定休