握手した相手の手にしっかり自分の指がまわった瞬間
大手広告代理店
長澤ロイさん
居心地のいいところにいると居心地が悪くなる
広告代理店で、主にイベントの企画&運営を担当しています。職業柄、いろんな業界と関わることが多いため、貴重な出会いもたくさんあります。ここ数年担当している大きなものは、12月31日のタイムズスクエアでのカウントダウンイベント。年末年始にニューヨークのタイムズスクエアが数十万の人で埋め尽くされ、皆で年越しをする世界的にも有名なイベントです。
世界を代表する大規模なイベントに携われることはもちろんですが、そこで関わる各業界をリードする重鎮たちのマインドや言動の一つひとつを実際に前にして、彼らと話して学べる機会は何よりも貴重だと思いました。そこで得た感覚って、今の自分の生き方にも影響しているんです。
カウントダウンイベントの担当は今年で3年目になりますが、今年は何をモチベーションとして取り組むか、考え中です。このイベントは、僕が初めて担当した2年前までは2〜3人で手掛けていたのですが、昨年はひとりで担当。もちろん達成感はありました。ならば、次のステージは? というのが今年の課題。
毎年同じモチベーションで仕事はできません。自分でハードルを上げていかないと、と思っています。居心地のいい場所にいると、モチベーションがわかず居心地が悪くなってしまうから(笑)。
追い詰められた環境が好き・・・というより、自分で自分を追い込むのが好きなんでしょうね。仕事においては、ある程度追い詰められることで伸びると思うんです。ピンチのときに自覚していなかった力を発揮することってあるじゃないですか。
家を購入する≒マイホームを持つ、
ということではない
大きな広告やイベントであればあるほど動くお金の額も大きく、その動きを間近で見ていることや最近家を購入したこともあり、投資の勉強を始めました。
ここニューヨークで仕事をしていくということは、アメリカ社会で生きていくことであり、アメリカのマインドで物事を考えないと、と思うんです。日本でいうところの常識的な感覚は一旦捨てないと、いつまでたっても世界のフィールドで仕事はできない。
そういう意味では、お金と労働に対する感覚って、アメリカと日本ではこうも違うかと思い知らされます。例えば、日本で家を買う≒マイホームを持つ、という感覚が普通ですよね。さらに、そこからローン返済に何年かかって・・・と引き算していく考え方。
対してアメリカ、特にここニューヨークにおいて家を買うということは、資産運用のひとつ、という発想が多い気がします。そこからどれだけ資産を増やせるか。だから、家を買ってもそれがゴールではなかったりする。自分自身、すでに今の家をどのタイミングで売るのかを考えたりも。
また、日本では労働の対価としての賃金、給与という考え方だと思うのですが、こちらでは、労働で稼ぐお金に加え、どれだけ自分でお金を生み出す仕組みがつくれるか。自分が寝ている間でもお金が動くよう「お金に働かせる」という考え方があったりする。こうしたことは、仕事でいろんな人と出会う中で得た視野であり、自分が生きていくうえでの指針にもなっています。
ビジネスマン同士、握手した瞬間に
背伸びし合っているのかもしれない
ビジネスシーンにおいて、特に男性同士は、最初の握手がモノを言うと思っています。持論ですが、握手の仕方でその人の仕事への意気込みや相手への敬意がわかるというか、握り方で「お、こいつできるな」と思うことも多々あります。
そもそもアメリカ人の骨格体型上、しっかりした手の人も多い。私の手は日本人としては大きい方ですが、肉厚で骨太の外国人と握手したら、私の手なんて華奢なもの・・・。がっちり握りたい相手なのに、自分の指が相手の手に回りきらないこともあったりで、そんなときは「ちぇっ」と思いますが、まぁこればかりはしょうがないですね。
逆に、しっかり自分の指が相手の手の甲まで届いてがっちり握手ができたときは、うれしいです。私はともかくとして(笑)、多くのビジネスマンはこの握手が緊張の瞬間にもなりうるし、若干背伸びし合う瞬間でもあると思うんです。
ニューヨークで日本の広告やイベントを企画&運営する際、つい「日本のために・・・」と言ってしまいがちだけれど、それは大義名分でしかない。仕事としている以上、その意識は常に自分の内に向いています。
仕事に限りませんが、「日本人」の長澤ロイとして見られることよりも、「長澤ロイ」個人として認められることがうれしい。だからこそ、自分の売りをアピールし続けないといけない。世界に出て自分の意見を自分の言葉で伝えることができるか・・・。そんなことを自分自身に問い続けています。
インタビュー 巌 真弓 / 撮影 Mayuko
大手広告代理店
アカウントエグゼクティブ
長澤ロイさん
米国ジョージア州の大学院を卒業後、ニューヨークへ活動の場を移し、NBAチーム、ニュージャージーネッツ(現ブルックリンネッツ)にてセールスインターンを開始。シーズンでトップセールスを記録し、正社員へと昇進。4年間のチーム職員を経て、現職へ転職。現在は、タイムズスクエアのイベント、およびデジタルプロモーションに従事する。