ロケ弁の評判がよかった瞬間
株式会社 エレメンツ・フォー・リアル
武内 竜一さん
アパレルの世界から、映像の世界へ
僕は映像制作会社に勤めていて、イベントものや企業PVなど、多岐にわたるジャンルの仕事にプロデューサーとして関わっています。
でも、最初から映像の仕事をしていたわけではなくて、もともとはアパレルの会社にいました。服が大好きなんです。単なる販売員としてだけでなく、企画も広告も、やりたいことはすべてやらせてくれて。しかも給料もよくて、言うことなしの環境でしたね。
当時、勤めてた店に映画の助監督をやってる人がお客さんでよくいらしてて、「手伝いに来い」って、ムチャぶりされてたんですよ。僕としては、アパレルの仕事に不満はなかったので、あまり気乗りしなかったのですが、岩井俊二監督の映画が好きだったので、岩井監督の現場に入れるなら手伝いに行きますよって答えてたんです。そうしたらなんと、監督の現場に入れるっていうんですよ。それで手伝いに行ったっていうのが、映像の世界に触れた最初でした。
現場は大変だったんですけど、めちゃくちゃがんばりました。完成した映画のラッシュ(スタッフ向けの試写)を観たときに、こんなにクリエイティブなものを作ってる人たちが世の中にはいるんだと感動して、映像の世界に入ったんです。
一つの映像には、たくさんの人が関わっている
前の映像制作会社では10年くらい勤めて、3年ほど前に今の会社に移ってきました。
僕がやっていることは、基本的には「プロデュース」。つまり、クライアントのニーズに合わせて、どんな映像が必要かを考える。クライアントと折衝し、目的に合ったカメラマンやディレクターやキャストなどの人材をアサイン(手配)して、かつ、制作の進行を管理するということ。ですが、小さい会社というのもあって、制作進行やAD、ときにはディレクションも助監督もやっちゃいます。なんでもやってしまうのは、すごく特殊な例でしょうね。
とはいえ、映像の仕事は基本的にはコラボレーションで成り立っているので、一本の映像を作るためにとても多くの人が関わります。いろいろな人と関わりながら仕事をしていく中で、人が育っていくのを見るのは楽しいですね。ADでどうしようもなかった奴が、今はいっぱしのディレクターになって、クライアントからも喜ばれているとかね。人の力量を引き上げるのもプロデューサーの仕事です。
多くの映像制作会社は、クライアントの言いなりに作るだけなんですよ。でも、僕らはクライアントの先にある、その映像を実際に観る人たちのことまで考えたいので、徹底的にクライアントとやり合うこともあります。ちょうど今手がけているものも、打ち合わせに2か月かけました。そうして出来上がった映像に、先方からも「完璧」と言ってもらえましたからね、そりゃ嬉しかったですよ。
クリエイターという人種が好き!
撮影ロケの手配も全部僕がやります。ロケがうまくいくかどうかは準備にかかってますから、時間も手間もかけて周到に準備します。でも徹底的に準備しても、雨が降ったら全部パーになったりしますから、撮影日が晴れれば、やった!という気持ちになります。ロケ弁の評判がよいだけでも嬉しくなっちゃうんですから、ゲンキンなものです。
仕事のかたわら、現代アートのコレクションもしています。作品自体ももちろん好きなんですけど、僕の場合はやっぱり人が好きなんじゃないかな。自分とは違う感性を持っていて、違う世界へ連れて行ってくれるんですから、素晴らしい人たちです。面白いことに、若い無名な作家を見つけて、知り合いになって、付き合っていくうちに、彼らどんどん有名になっていくんですよ。変化や成長を見続けられるのは本当に幸せなことですし、結局、僕はクリエイターという人種が大好きだってことなんでしょうね。
インタビュー タナカトシノリ / 撮影 タナカトシノリ
株式会社 エレメンツ・フォー・リアル
アカウントマネージャー プロデューサー
武内 竜一さん
映像制作プロデューサーであり、アートコレクター。
アパレル会社に勤めていた過去、ひょんな出会いがきっかけとなり、映像の世界へと足を踏み入れる。企業紹介映像や製品のPRビデオ制作のほか、グラフィックCGやWeb、DTPデザインなど、幅広く手がける。