もやっとした「思い」が、商品というカタチになる瞬間
株式会社ちきりや
飛田 圭子さん
私、実は一回落とされたんです
京都生まれです。以前は別の会社で働いていたんですが、祇園祭に遊びに行ったときに「ちきりや」を見つけました。でもそのときは敷居が高い気がして一度も入れなくて・・。その後、ハローワークで社員募集を見つけて面接に行ったんです。
面接のときに茶釜で沸かしたお湯でお茶を飲ませてもらったんですが、そのお茶が
本当においしくて驚きました。底が見えないほど濁った本当に苦そうなお茶なのに、まろやかで、香ばしくて、甘い。ここで働きたいと強く思いました。でも二度目の面接で、私、実は一回落とされたんです。ご縁がなかったんだと思っていたらもう一度連絡が来て、やっぱりこちらで働きませんか、と。二つ返事で「じゃあ、行きます!」と答えました。
いろいろ悩んだ分、カタチになったときは嬉しい
「ちきりや」は安政元年(1854年)創業の老舗。お世話になった京都の呉服商「千切屋」の名前をいただいて暖簾分けし、宇治茶の販売を始めたのが最初です。どんなに堅苦しい会社かと緊張して入社したら、意外と普通の会社でした(笑)。風通しがよくて、みんな仲よし。一番偉い社長だって隣の部屋という距離の近さなんです。
物流の仕事を覚えることから始まり、通信販売・営業も経験しました。今は商品の企画・開発をやっています。企画・開発の担当になって最初に手掛けたのが、茶葉のパッケージの刷新。他社の商品を見ても、茶葉のパッケージは緑色が多い。そのなかで「ちきりや」らしいパッケージを作ろうと考えて、思い切って黒を採用しました。そこに着物の帯のような和風のデザイン。これは呉服商「千切屋」から続く社歴と京都らしさを表現したものです。黒地のところには、こっそり舞妓さんのシルエットのぼかしも入っているんです。
仕事は家には持ち帰りません。電車の中ではまだあれこれ悩んでいても、家に帰ったら忘れます。でも好きなドラマを見たりしているときにふっとアイデアを思いつくことがあり、そのときは慌ててメモします(笑)。いろいろ悩んだ分、カタチになったときはうれしいですね。「見て見て~!」とみんなに見せます。お客様からも、「京都らしいパッケージですね」と褒められることも。今の仕事はたぶん自分に合っていると思います。
いくら飲んでも、お茶は飽きません
本当は茶葉を広めたいのですが、最近は一煎用ティーバッグや煮出し用バッグがよく売れます。若い人にも手軽に飲んで欲しいし・・・。そんなことから、今年自分が住んでいる町内の地蔵盆で水出し茶のサービスを出させてもらったら、若いお母さんや子どもたちが「おいしい!」と喜んでくれたんですよ。
ときどき生産者さんや同業者さんと集まって、一緒にお茶の勉強をします。会社同士はライバルでも、個人的には尊敬できる大好きな仲間。30代の若い生産者さんや40代の社長さんも参加します。「どうやったらもっとお茶に親しんでもらえるだろう?」と話したり、ほかの会社の新商品をみて、「先を越された! こんな商品作ったんだ!」と思ったり。何時間ぐらい集まるのかって? そうですね、お茶飲んでお菓子食べてまたお茶飲んで・・・この前は5時間でした(笑)! いくら飲んでも、お茶は飽きません。
お茶を使った創作料理、
あるいは日本最初の抹茶アイスクリームは
いかがでしょうか
そうそう、「ちきりや茶寮」というカフェ兼レストランが、2011年にオープンしました。実は戦前の「ちきりや茶寮」は戦争で閉店。これが70年のときを経て復活しました。
戦前の茶寮の人気メニューは、抹茶アイスクリーム。そこで新しい「ちきりや茶寮」では、アイスクリームに、抹茶を好きなだけかけることができるサービスもあるんですよ。また、横浜の中華料理の名店で修業したシェフの手による、茶葉を使った創作料理もお楽しみいただけます。こうして少しずつ、お茶のファンが増えると嬉しいですね。
インタビュー Minachi Emi / 撮影 Nishii Akiko
株式会社ちきりや
営業部 企画・開発主任
飛田 圭子さん
高校卒業後、劇団・養成所に所属しての演劇活動、百貨店・健康食品会社勤務を経て、2002年ちきりや入社。物流・営業・品質管理などの業務を経験したのち、現在は企画・開発を担当。日本茶インストラクター、フードコーディネーター、食生活アドバイザー、茶育指導士。平安神宮や北野天満宮などでのお茶の淹れ方教室などのイベントに参加するほか、地元でも日本茶カフェを開催してお茶の普及につとめている。趣味はTVでドラマ鑑賞。
ちきりや 店舗および通販
京都市中京区三条通り室町西入衣棚町45
075-221-0528
営業時間 9:00~17:30
定休日 土曜日、日曜日、祝日(別途定休日あり)
http://www.kyo-chikiriya.com
ちきりや茶寮
京都市中京区烏丸通四条上る笋町682梅軒ビルBF
075-253-6322
ランチ 11:30~14:30(LO14:00)
ディナー 17:00~21:30(LO21:00)
定休日 日曜日、祝日、第2・4土曜日(別途定休日あり)
http://www.kyo-chikiriya.com/saryo/