ぴったり30gだった瞬間
スイーツアーティスト
都築 美穂さん
作り手の密かな楽しみ
材料の重さを手の感覚だけで計って計量機に乗せる。予想通りの数字が表示されると、思わず頬がゆるみます。お寿司のシャリに似ているかもしれませんね。ずっとやっているとだんだんと材料の重さが感覚でわかってくるんです。
私はスイーツやパンの製造、販売、教室などの活動をしています。
その中でもメインはポップケーキ。ブラックココアのケーキをスティックに刺してチョコレートでコーティングし、文字や絵をデコレーションしたかわいいスイーツです。月に2000個ほど作るときもあって、材料の計量でぴったりの数字をだすのが密かな楽しみだったりします。そのうちスーパーでリンゴの重さとかがわかるようになるんじゃないかな(笑)。
みんな誰かのために作っている
ポップケーキは贈り物にされることが多くて、教室の生徒さんは贈りたい相手を想像しながら作っているんです。
「猫好きの友人のために、猫を作りたい」「姪っ子に送るんで郵便伝票を用意してきました」などそれぞれ贈りたい相手がいます。そういった想いを形にするお手伝いができるのはとてもやりがいがあります。
でき上がったケーキを置いて、角度とか配置をいろいろ工夫しながら写真を撮っている生徒さんを見ると、暖かい気持ちになりますね。私はそんな生徒さんの姿を写真に撮るのが好きです。写真を撮っている姿を写真に撮る(笑)。
教室で作ったポップケーキは基本的にお持ち帰りいただくので、その場では私が作ったものを試食してもらいます。そのとき「かわいくて食べたくない」とお約束のように言ってくれるのはうれしいですね。結局、パクっと一口でいかれるんですけど(笑)。見た目のかわいらしさもそうですが、おいしさもポップケーキの魅力なので体験していただきたいです。
パンは買うものだと思っていた
友人にパン教室に誘われたことがきっかけで今があります。最初はパン作りに夢中になっている友人に「そんなにパンが食べたいのなら買ってあげるよ」って言ってました(笑)。
ともあれ、せっかく誘ってもらったので参加してみたら、なんて楽しいんだろう!! って思ったんです。それから教室に通い、のめり込み、会社を退職してパン教室を始めました。なので、活動としてはパンが始まりです。
パン教室を始めた頃、ホノルルに旅行したことがあって、そこでポップケーキを見つけて「なんだこれは!? ぜひ作ってみたい!」と思ったんです。結果、帰りの荷物はポップケーキの材料でいっぱいでした。それからポップケーキを何度も作って、パン教室の生徒さんや友人に試食してもらいました。
そうしながら日本人の味覚に合うようにちょっとずつ調整していって、現在のスタイルにたどり着いたんです。今思うとパンは買うものと思い込んでいた私が嘘みたいですよね。
多くの人にパンやスイーツを作る楽しさを
始めてパン教室に行ったとき私が感じたような楽しさを、ほかの人にも伝えたい。私はもっと早く、子どもの頃に知りたかったという想いがあります。だから、子ども向けのスイーツやパンの教室も積極的にやりたいと思っています。子どもが楽しいと感じるかどうかはそれぞれだけど、パンやお菓子作りを知っているといないとでは大違いだと思うんです。
半分冗談、半分本気ですが、世界制覇を目論んでいます。味覚の違いはあれど、全世界に「食」は存在しているので、食べてみたい、きれい、という感情は通じると思うんです。
最近は展示会をやらせていただくなど、スイーツアート的な活動もしているので、そういった方向でも挑戦していきたいです。
インタビュー トグチダ / 撮影 北原 千恵美
スイーツアーティスト
都築 美穂さん
航空会社で客室乗務員として勤務するかたわらパン教室に通う。2010年に退職し、貸しスタジオでパン教室を始める。2011年にホノルルでポップケーキに出会い、日本テイストに改良。現在はポップケーキをメインに、パンやスイーツの製造、販売、教室などの活動をし、2015年には初の展示会を開催。
著書:『はじめての mihopan popcake』(ブティック社)
HP: http://popcake.jp/
ブログ: http://ameblo.jp/miho–pan/
FaceBook:https://www.facebook.com/POPcake.jp