新宿ゴールデン街で編集者のおごりで飲んだ瞬間
イラストレーターなど
ヨシムラヒロムさん
イラストでも文章でも、
「ヨシムラヒロム」でやる価値のある仕事は
忘れられないものになります
小さな幸せ、ですか。だったら、ちょうどいい話があります。
この業界で働いている上でひとつ夢を持っていて、それは「編集者のおごりでゴールデン街の店に連れていってもらう」というものです。ありがちな話ですよね。でも、そんな出版界あるある的な話でさえ、時代的に薄れていってしまっているじゃないですか。
雑誌『東京人』でイラストと文章を書かせてもらっているんですけど、表紙のイラストを担当させてもらったことがあって。そのときに編集者の方が「じゃあゴールデン街で飲もう」と誘って下さったんです。その人の行きつけの店で、泡盛のジャスミンティー割りみたいなのを飲んで。あれは美味しかったですね。忘れられないです。
たぶん、業界的にそんな楽しいこともなくなってますよね。だから、むしろ大きな幸せなのかもしれないですけど。
ゴールデン街といえば、もうひとネタありました。
僕がこの仕事をしたのって、みうらじゅんさんに憧れて、みうらさんになりたくて、なんです。だから大学も同じムサビに行って、名刺の肩書き「イラストレーターなど」と一緒にしているんですけど、ゴールデン街で普通に飲んでいたら、同じ店にみうらさんがいらっしゃって、一緒に飲むことができたんです。本当に偶然。どうもどうも、好きなんです。ああ、そうなんだ、みたいな。飲んだといっても、その程度ですけど。僕みたいに憧れている人なんて、山ほどいるわけですから。
著名人を取材するときに作るんです。
「オレペディア」って呼んでいるんですけど
大学時代から著名人に会いに行って、録音した会話をポッドキャスティングで流して番組を作ってました。そういうことをやっている延長上に仕事があるのかもしれないという打算的な考えももちろんありましたし、あとは著名人を独占できるというのもありますね。
普通に行って「1時間話したいです」ってお願いしても、時間をとってもらえないじゃないですか。でも、ポッドキャスティングやります、1時間インタビューさせてくださいって言ったら、名目があるから独占して聞きたいことが聞ける。これはいいと思いました。
ただ、インタビューされ慣れている方は「ああ、またインタビューか」程度で、不感症というか、心を開かせるのは至難の業です。
だから僕は事前に下調べをする際、プロファイリングした資料を作るんです。インタビューイーを中心にして、その方の著書や番組、繋がっている人、銘柄などをどんどんつなげていく。僕はこれを「オレペディア」って呼んでいます。
インタビューだから、当然会話に詰まることも想定されます。でも、これだけ調べると自ずと頭に入るし、担保にもなるというか、こいつ、普通のやつと違うなと、興味を持って話してくれるんです。水道橋博士を取材したときなんて、ものすごく喜んでくださってブログでも紹介してくれました。
僕はリサーチ能力に長けているわけではないですけど、オレペディアはイラストとかも書ける自分だからこそ作れるっていう自負はありますね。一種のフェティシズムでしかないかもしれないですけどね。
ヨシムラヒロム オリジナル 「オレペディア」
サブカルを是正しなきゃアカンな、みたいな。
それが今のテーマです
イラストや原稿を描いて、取材して、時々編集者さんのところに打合せに行く。ジャンルも問わず、依頼があったらなんでもやっています。何かひとつではなく、多方面に仕事をしている方が人生豊かになるんじゃないかと思います。要は、飽きないですね。
もちろん、もっとヨシムラヒロムに独自性・作家性を持たせないと、などの課題はあります。
サブカルが好きみたいな話になるんですけど、僕はサブカルなら全部好きというわけではなく、90年代サブカルが中心で、といってもみうらじゅんさんと小沢健二さんくらいですかね。
今のサブカルって、結構な割合で恋愛の話になってますよね。モテるかモテないか、みたいな。それじゃないのにと思います。サブカルを是正しなきゃダメだよなぁ、と。僕が是正するわけじゃないけど、誰かに是正してほしいですね。
今日はイラストの締切があってやばいんですけど、楽しかったです。インタビュー、される方が楽しいですね。
インタビュー 伊藤 紘子 / 撮影 岡本 卓大
イラストレーターなど
ヨシムラヒロムさん
1986年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業後、イラストレーター・ライターに。現在、美大生の総合メディアPARTNER「コラムニストの憂鬱」、@DIME「勝手に宣伝部長」などで連載中。中野区観光大使でもある。
カットや執筆のご依頼は7h446m@bma.biglobe.ne.jpまで
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