入居人が豆大福を持ってきてくれた瞬間
代々木村田マンション
村田 憲彦さん
村田マンションはD.I.Y
うちのマンションは自分で部屋を改装出来るんです。天井や床の改装も自由。もともと建築業をやっていたので、どんな風に改装しても、直ぐ元に戻せます。
なので、入居者のみなさんは、タイルを貼ったり、ペンキを塗ったり、自由にリノベーションして使ってます。
「部屋の壁に穴を開けたい」って言われた時も、事務所で電動ドリルを貸してあげたりもします。
変わり者が多くてね、本当に面白い部屋ばかりです。
85室あるんですけど、同じ部屋は一つとしてありません。
マンションを建てたのは、東京オリンピックの前だから、もう52年ぐらい経ちます。マンションの走りで、部屋は旅館風の作り。大卒の初任給が1万円の時代に家賃は5万円。
芸能人や有名人が沢山住んでいましたよ。みなさん気さくでいい方々でした。
今住んでる人は、自分で好きなように改装して「住」を楽しもうって人たちばかりです。古い建物っていうのも魅力みたいですね。若い人たちも口を揃えて、この古さがいいんだと言います。
でもね、建物は古いけど、防犯カメラもインターネットも、いち早く導入してるんです。古いだけではなく、安全で便利というところも、いいんじゃないですかね。
不思議なことに、マンションに入居した人は、みんな商売がうまくいくようで。
手狭になったこの場所を離れて、もっと広い所に越していくんです。
いつからか、次第に「出世マンション」と呼ばれるようになり、マスコミにも取り上げられるようになりました。
今入っている人たちも、きっと大きくなって出ていくんじゃないかな。
ボートで培った「和の精神」
大学時代はボート部に入っていました。
今でもボートには携わっていて、大会があるたびにあちこち行かなければならず、結構忙しくしています。
不動産や建築は一家代々の家業で、私は三男なんですけど、兄弟たちとの話し合いで、ボートのこともやらせてもらえるならって条件で、このマンションの管理をすることになりました。
父親のモットーが聖徳憲法17条の「和の精神」。和を以て貴しとなす。
つまり、同じ仲間なんだから、いろいろある時も、仲良くやろうよっていうことだったんです。
ボートも同じでね、気持ちが合わなければ、舟は前へ進まないわけです。
だから、私のモットーも「和の精神」。うちのマンションは揉め事がとても少ないんですよ。
早く出て行けって言ってる
古いマンションだけど、居心地がいいらしく長居したがる人も多い。
こんなところに長くいるもんじゃない。早く商売を大きくして、もっと良いところへ引っ越せ、って常々言ってるんです。
だからね、「夢が叶って、青山にお店を出すことになったので引っ越します。」なんて報告があったりすると、本当に嬉しいですよ。
その瞬間の為に、この仕事をしているようなものでね。
入居者さんが出て行くまでの期間は、「和の精神」で仲良くやっていきたいですね。言いにくい頼み事とかする時には、豆大福を持ってくるんです。好物なのをちゃんと知ってるの。
実際、豆大福にはてんで弱いんでね。どんな頼み事も、よしよしって聞いてあげたくなっちゃうんですよね。
インタビュー タナカトシノリ / 撮影 タナカトシノリ
代々木村田マンション
オーナー
村田 憲彦さん
大切にしていることは、「和の精神」。
大学時代からボートに親しみ、現在はマンションオーナーだけでなく、ボート協会の役員も務める。
豆大福には目がない。
代々木村田マンション(村田第1ビル)
住所:東京都渋谷区代々木4-28-8
最寄駅:JR山手線「新宿」駅、京王新線「初台」駅、小田急線「参宮橋」駅