「どうすればいいんでしょうか」が「心が軽くなりました!」「安心しました!」にかわる瞬間
生活サポート生活協同組合・東京
志波 早苗さん
子どもがいくつになるまで、
お年玉をあげたらいいんでしょうか?
無料・匿名で電話相談を受けています。以前は多重債務に悩んでいる方からの相談が多かったのですが、相談内容は人それぞれ、些細なことから深刻なことまで。「子どもがいくつになるまで、お年玉をあげたらいいんでしょうか?」なんて相談もあり、本人は真剣に悩んでいるのかもしれないけれど、正解はないんですよね。今日は服役中の方からの相談もありました。年に何度かはこのような相談もあります。
相談を受けるのは、消費生活アドバイザーや社会福祉士、FPなどの資格を持っている方です。でも結局は、資格よりも一件一件の相談内容を、一生懸命聴くことが大切なのかなぁ、と思うことが多いです。自分で何かを決めることができない・・・のかな。昔は大人になる儀式があったけど、今の成人式はただのイベントなのかも。大人になりきれていないっていうか。うまく言えないのですが、きちんと子どもと向き合えなかった親がいて、その親に育てられた子どもがそのまま大きくなって子育てをしている。40歳、いえ、60歳になってもまだ、「私がこんなふうなのは親のせい」って。心の弱さからか、景気が悪くなったり震災が起きたりすると、すぐに心がポキッと折れそうになる。雑草のようなたくましさが欲しいですね。
天職?
いえいえ、本当にぼやーっとした子どもでした(笑)
小さい頃は雲を眺めて過ごしているような、本当にぼやーっとした子どもでした(笑)! 大学を卒業してすぐ結婚、子どもを幼稚園に入れたら、手元に六千円しか残らなくて。「私も働かなくちゃ!」と近所のママ友につぶやいたら、生協の人に「この人、働きたいんだって。」と言ってくれて。生協で与えられた仕事に取り組んできたら、「くらしの相談ダイヤル」にたどり着いていました。
2009年の立ち上げ以来、試行錯誤の連続でした。はじめは相談される方のお名前を聞いていましたね。「テレビの二時間ドラマのような話って本当にあるんだ・・・」と思いました。相続で親族がもめているとか、2008年のリーマンショック直後だったので、「給与がカットされた」「子どもにお金がかかってどうしよう」とか。実際にはすっきり二時間で解決することはほとんどないです(笑)。
心が弱った人の「一歩」に寄り添いたい
今の時代って、ちょっとした愚痴や悩みごとでも、話せる相手が居ない人が多いのかな。仲の良い人が居ないのか、それとも仲が良いからこそ言えないのか・・・。もしかしたら仲が良いから言えないのかもしれません。最初は「恥ずかしい」「でもどうしていいかわからない」と言いながら恐る恐る電話して来られた方が、一たび相談員を信頼すると様々なくらしの悩みごとを相談されることも。「聞いてもらって心が軽くなりました」とか「公的制度が使えそうだとわかって安心しました」とか、感謝されるとうれしいですね。心が弱った人がどうやったら一歩踏み出せるか、これからも寄り添いたいと強く思います。
困っている人に両手を差し出すのは怖くても、
片手だったら
生協の理念って、よいこともつらいことも分け合うことだと思います。これって本当に素晴らしいと思うんですよ。自分が人を助けられるときは片手を差し伸べて助けてあげればいいし、自分が助けてほしいときには誰かに助けてもらえばいい。両手で助けたらもしかすると自分も倒れちゃうけど、片手だけなら大丈夫(笑)。
「世の中が悪い」って他人事のように批評するよりも、ちょっと自分の片手を差し出してほしい。他人のためっていうよりも、自分のためっていうか。ほら、誰かにとってくらしやすい社会って、自分にもくらしやすい社会だと思うんです。普通の人がさりげなく片手を差し出せる社会になったら、もっとワクワクできる社会になると思います。楽しみですね。
インタビュー Minachi Emi / 撮影 栗原 洋平
生活サポート生活協同組合・東京
くらしの相談ダイヤル
志波 早苗さん
東京都生まれ。パルシステム生活協同組合連合会職員。幼い頃にベトナム戦争のニュースを見て「戦争は嫌だ」と思い、多摩川に合成洗剤の泡が浮かび、暮らしの中にプラスチックゴミが増えるのを見て「なぜ自然に還らないものを使うのか」と訝しんだ。趣味は食べる、しゃべる、笑う!
くらしの相談ダイヤル (どなたでも無料で相談することができます)
0570-055-656
03-6205-6720
月曜日~金曜日 10:00~16:00 (土・日・祝日休み)