よい負け方ができたと実感した瞬間
表参道総合法律事務所
金川征司さん
「頼んでよかったです」の一言で負けが報われる
裁判にはどうしても、負け筋と勝ち筋というものがあります。起こった出来事を整理して判断するとどうしてもあらがえないときはでてきます。
例えば、100万円を借りていて、借用書もある。そんな方が債権者からお金を返して欲しいと訴えられていたとすると、100万円を借りているという事実はくつがえしようがないんです。本当は借りていないという証拠があるのならまた話は別ですけれど、あくまで事実として100万円を借りているわけです。
そんなときに僕らができることは、最善の落としどころを探すことなんです。お客様と相談しながら、状況を総合して負け方を考えます。お金を月にいくらずつ返していくとか。実はお金だけではなくて、当事者間の感情のもつれがからんでいることもあるので、そこを整理してほどいてあげることも考えます。
勝ち筋の案件って勝って当たり前なので、どちらかというと、負け筋の事件の方がお客様に喜んでもらえることが多いんです。案件がひと段落してお客様から「頼んでよかったです」とおっしゃっていただけたときは、よい負け方ができたという実感がわいてとてもうれしいです。裁判は勝ち負けがすべてではないんですよね。
きっかけは兄に勧められて
大学を卒業した後、2年間浪人、その後大学院に進みました。司法試験のために勉強した時間は社会人が働いている時間くらい。そんなに言うほどはしなかった(笑)。27歳のときに合格しました。
司法試験に合格すると、1年間研修があるんです。裁判所の民事部と刑事部、検察庁、法律事務所などで研修します。最後に試験があって合格すると、弁護士や裁判官、検察官などになります。僕は28歳で弁護士になりました。
弁護士を目指し始めたきっかけは、歳の離れた兄に勧められたからなんです。僕が高校生の頃に、兄は医大に進んでいて、兄から「医者より弁護士やってみたらいいんじゃない?」って言われました。実は僕は数学と物理がまったくわからなくて、文系に進むしかなかったんですよね。大学の頃に何となく勉強し始めたのですが、いつの間にか後戻りできなくなっていました(笑)。周りは就職やそれぞれの道を歩んでいく中で、僕には弁護士の道しかないと思っていました。
少しずつ扱える分野を広げていく
弁護士の仕事は取り扱うジャンルの幅がとても広い。普段は意識することはないと思いますが、生活すべてに法律が関わっています。個人の方だと離婚や相続、会社ですと契約上のトラブルや、合併など法律が関係してくる状況はたくさんあります。すでにトラブルが起こっているときにくる依頼もありますし、リスクマネジメント的なこともします。もちろん裁判という場面も仕事の一つです。よくテレビや映画で登場する弁護士は演出が入っていることが多いんですよ。裁判官の前にでて大袈裟な身振り手振りをすることはほぼありません(笑)。淡々と進行していくものがほとんどですね。
一回の相談で終わる案件もあれば、何年もかかることもある。裁判になると大体1年くらいで終わります。相続関連の案件はわりと長期的になりがちですね。僕が担当したもので一番長かったのは4年くらいです。長期的な案件が解決すると、やっぱりほっとします。
今後は自分が取り扱える分野を広げていきたいです。個人の仕事、会社の仕事、特許や著作権、従業員を増やしたいなど、法律にからむお客様の悩みはさまざまです。まだまだ勉強できることは多くあるので、そのなかで自分の関われる案件を少しずつ広げていきたいと思います。
インタビュー トグチダ / 撮影 北原 千恵美
表参道総合法律事務所
弁護士
金川征司さん
広島県出身。関西学院大学,九州大学法科大学院卒業。28歳で弁護士登録後,銀座にて事務所設立。2015年9月から表参道総合法律事務所に共同参加する。取扱分野な企業法務・個人事件などさまざま。趣味は美味しい食事とお酒。
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