思いっきり息を吸った瞬間
株式会社湘南DIVE.com
関田 昌広さん
潜った後の空気のおいしさは格別!
12歳から海中の魅力に取りつかれて、ダイビング一筋。鎌倉でダイビングショップを経営し、葉山や城ケ島などでインストラクターとして海の中をご案内しています。
ガイドをしていて幸せだと感じる瞬間は、海から上がって、息を吸ったとき。「ああ、なんて空気はおいしいんだろう」って感動するんですよ。タンクの空気は湿っぽくておいしくないんですよね。本当に、空気のにおいと味には敏感になりますよ。
あと、水中は声が通らないので、会話もできません。だから、陸に上がって自分の思いを声に出したり、文章で表現したりすることにも喜びを感じますね。
息を吸うとか、声を出すなんて、本当に当たり前のことでしょう? でも、この仕事をしていると、そんな些細な当たり前のことでも幸せを感じるようになるんですよね。
湘南の水中をお届けしたい
僕が湘南でダイビングショップを経営しているのは、湘南の海の美しさを皆さんにお届けしたいから。
江の島や逗子のビーチに遊びに行くことはあっても、海に潜ってどんな生き物がいるのか観察したことのある人はなかなかいないんじゃないですか?
でも、海はとてもきれいで、水中の自然はとても豊か。海藻が茂っていて、生き物もたくさんいるんです。「東京からわずか1時間の海に、こんなに魚がいるの?」と、皆さんギャップに驚かれますよ。
関東地方のダイビングのメッカといえば伊豆方面ですが、湘南の海もおすすめです。東京から最短で来れるダイビングポイントなので、気軽に遊びに行けるのがいいですよね。
ただ、湘南の海がいくら美しい海とはいっても、人が多く訪れるので、ゴミがどうしても目立ちます。
だから、うちの店のスタッフは、潜ったときにゴミを見つけたら、必ず拾うようにしていますし、「ゴミ拾いダイブ」というイベントを企画することもあります。
ダイバーがゴミを拾わずして、誰が海をきれいにするんだって話ですよね。ダイバーは海の最前線にいる存在ですから、海の状況を見て、まず行動していくのが使命なんですよ。
うちの店では、好きなときに来て潜っていただくスタイルです。ご要望があれば、インストラクターが水中をご案内します。いつもガイドしてくれるインストラクターと沖縄や海外で潜りたいというお客さんからのリクエストにお応えして、沖縄や海外へのツアーも企画することもあります。
多くのダイビングショップは、このようにお客さんにインストラクターがついて水中を案内します。でも、うちの店ではライセンス所持者が2名いれば、タンクだけレンタルして、インストラクターなしで潜れるようにもしています。
こうすれば、気が向いたときにぶらりと潜りに来やすいですからね。
もちろん、ライセンス取得のための講習や、より難易度の高い海に潜るための講習も行っています。こちらも、お客さんの都合に合わせてスケジュールを組みます。
ダイビングは、8歳以上であれば、性別も年齢も関係なく楽しめるアクティビティです。
もし、80歳を過ぎた方があらたにライセンスを取りたいと思ったとしても遠慮はいりません。安心して海中を楽しんでいただけるように、全力でサポートしていきますよ!
手話も気象も、日々勉強中
僕は、より多くの人に自分の大好きな海の中を伝えたいと思っています。
水中は音の聞こえない世界なので、ダイビングは耳の不自由な方であってもハンディを感じずに楽しめます。
とはいえ、ダイビングは最低限のルールを守らないと危険ですし、ときには体に後遺症が残ることもあります。インストラクターに安心して命を預けてもらうためには、コミュニケーションをきちんととって、信頼関係を築く必要があります。だから、僕たちスタッフは最低限の手話はできるようにしています。そして、もっとお客さんとコミュニケーションが取れるように、手話通訳士を目指して猛勉強中です。
また、ダイビングは自然相手なので、天気、特に波に影響する風向や風速には注意する必要があります。特に台風は、遠く離れた場所にあっても「うねり」と呼ばれる高い波を発生させるので、その動向には常に注目しています。
お客さんになるべく安全に海の中を楽しんでほしいので、僕は気象予報士の資格を取りました。今は、駆け出しのダイビングインストラクターに向けて、気象講座を行っています。
そういえば、このまえは大波にもまれて死にかけました。
鎌倉の人々に向けて「湘南の水中からの四季」について講演する機会があったので、台風によるうねりが出ているときに写真を撮ろうと浜辺に出たんです。
3~4mの迫力ある波が近づいてきたので、夢中になってカメラを構えていると、あっという間に波にさらわれて。そのとき、脚が骨折したのがわかりました。
脚には激痛が走るし、ろくに呼吸もできない。でも、引いていく波と一緒に沖に流されたら一巻の終わりです。だから、必死で岩にしがみついたんですが、手は血だらけだし、ウエットスーツはぼろぼろになりました。
結局このときの怪我は全治2カ月。さすがに三途の川が見えましたね。
まあ、この仕事をしていると、1年に3回くらいはこんなことがあります。だからこそ、生きているって素晴らしいと思うんですよ。
インタビュー 今井 明子 / 撮影 廣瀬 育子
株式会社湘南DIVE.com
代表取締役
関田 昌広さん
東京都出身。
潜水士。気象予報士。防災士。宅建主任者・総合旅行管理者。船舶1級。
12歳からダイビングを始め、18歳でプロ免許を取得。
その後、伊豆の上級ダイビングポイントである神子元島にてダイビングのガイドを行う。
2008年に独立し、鎌倉のダイビングショップ「湘南DIVE.com」のオーナーとなる。 http://www.shonandive.com/