コミットメントノートに書かれた上司の言葉を読んだ瞬間
料理研究家・フードコーディネーター
河瀬璃菜さん
「おにぎりはじまるよー」という一言で、
うちの会社は朝のミーティングが始まります。
「おにぎりミーティング」と呼ばれているもので、社員全員で手作りのおにぎりを頬張りながら、最近のトピックスや悩みなど、いろいろな話をします。いい具合に肩の力が抜けて、意見が出やすい。同僚と情報や体験をシェアする時間があることで、上司とも意見交換をしやすくなり、職場がいい雰囲気になっていると思います。日々の「おにぎりミーティング」は自分や同僚の悩み、仕事へのヒントに気づくことができる大切な時間です。
上司とやり取りするツールの一つに、コミットメントノートというものがあります。その日自分がやるべきことを書き込み、読んでもらうものです。仕事のことだけではなくて、今日の一言みたいな感じで、プライベートのことを書くこともあります。ちょっとした交換日記みたいなものでもあるんです。
ある日、プライベートの人間関係で上手くいかなくて、コミットメントノートに書いたことがありました。そのときの上司のコメントがすごく素敵で、幸せな気持ちになりました。私の2倍ぐらいのコメントを書いてくれて。
簡単に言うと、「その人と、どういう関係性でいたいのかを考えたうえで、気持ちを伝えてみるといいかもよ」と、「私は、自分自身とどのように付き合っていくのかを考えています」というような内容でした。それで実際に伝えてみたら、気持ちを受け取ってもらえて自分も相手も大切にできたと感じました。
あのときの言葉は、プラベートだけじゃなくて仕事にも活かすことができています。どんな自分になりたいか、どんな世界を作りたいかを考えて行動するという、一つの私の指標になっています。大切な言葉なので、携帯で写真に撮っていつでも見れるようにしていますね。
仕事ってツールだと思うんです。自分が人生のなかで、どこに向かっていきたいかという意図を持っていると、何の仕事をしていてもそこにつながると思います。私は料理が好きで、「食を通して、大切な人との暮らしをもっと楽しくしたい」という想いがあり、今の仕事をしていますが、もし自分が教師や医者であったとしても、同じようなことを伝えたいですね。
食卓はかけがえのないコミュニケーションの場。家族のコミュニケーション不足によって起こりうる、犯罪や心の病などの悲しい出来事も、食卓に料理が並んで会話をするなかで、何か変わるものもあるんじゃないかな。仕事を通して、なりたい自分、やりたいことにつながっていければと考えています。
とりあえずなんでもやってみる
変わった仕事も多くて、オオグソクムシという巨大なダンゴムシのような深海魚を食べたことがあったんです。「うぎゃー」とか言いながら、バリバリと食べた話を別の現場ですると「料理もできるのでは!?」なんていう話につながって、オオグソクムシのケータリングを作る仕事をいただいたんです。
けれど、インターネットで調べてもオオグソクムシのさばき方って出てこないんですよ(笑)。でもやっとのことで、とある漁師の方に基本的な調理方法を教えてもらい、無事メニューを作ることができました。
素揚げにして、エビチリのように調理した、なんとも不思議な料理になったのですが、ケータリング当日、珍しい料理を前に会話が弾んだり、コミュニケーションをとるきっかけになったり、「意外とおいしい」と言ってくれる方がいたり……。やった甲斐があったなと思いました。料理は残ってましたけど(笑)。
そういう不思議な体験って、人と仲よくなるきっかけになることもあるんです。オオグソクムシを食べたことがあるという話で初対面の人と盛り上がれたりもしますしね。
いろんな挑戦のなかで、目指す場所を調整していく
料理に関わることを幅広く扱っているので、さまざまな仕事があります。なかでも好奇心を突き動かされるものは、都合がつけばなるべく断らないようにしています。
たとえば、今の自分が10の選択肢や幅を知っていたとして、それが自分の目指すところだなと感じているとします。でも、それはあくまで10しか知らないからなのでは、と思っているんです。だから今後もこの幅や選択肢をどんどん広げ、増やしていきたいですね。
20知って、30知って、そのなかから何かを選ぶというのもありかな。なので、いろんなことを経験し、挑戦していきたいです。そのなかで目標が増えても、それもきっと楽しいですよね!
今は、大切な人との暮らしをもっと楽しくするお手伝いを、食を通して叶えていきたいと思います。自分や大切な人との暮らしを豊かにしたい。一度しかない皆様の人生をイキイキと輝かせる一つのきっかけになればうれしく思います!
インタビュー トグチダ / 撮影 北原 千恵美
料理研究家・フードコーディネーター
河瀬璃菜さん
家族で食卓を囲むことで自然と会話が生まれ、コミュニケーションを大切にできたという経験から、「食を通して大切な人との暮らしをもっと楽しく」という想いを持って活動中。レシピ開発や料理教室講師、イベント企画運営、メディア出演、コラム執筆、執筆プロデュースなど、食に関わるさまざまな仕事を手がけている。
【書籍】
レシピ監修『ジャーではじめる DETOX WATER』(双葉社)
レシピ監修『決定版! 節約冷凍レシピ』(宝島社)
【ブログ】
http://ameblo.jp/linakawase/
「株式会社フードクリエイティブファクトリー」
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