仕事の仕組み、あたりまえのことを実感した瞬間
クラフトアーティスト
KAIEさん
フリーになって改めて知る
作った作品に共感してくれて、お金を出して買ってくれる。フリーのアーティストになって、改めてそういった仕組みの尊さを実感しました。
現在、布や毛糸を使ってリメイク作品を作っています。作品は、ウェディングドレスやドリームキャッチャー、ティピやゲルなどさまざま。先日は「JAPAN FOLK FESTIVAL 2015」で展示させていただきました。
本格的にアーティストとして活動し始めたのは今年の4月から。それまでは大手の会社で事務職をしていました。与えられた仕事をこなして、定期的に給料が出て、残業代ももらえて・・・という安定した環境。けれど、自分の仕事が誰のためのものかがわかりづらかったんですよね。
フリーの立場になって感じた大きな変化は、お客様が直接見えるということ。お金を出してもらうという尊さも含めて、表情や反応がダイレクトに伝わってくる。認めてもらって、信頼を得て、仕事が生まれる。逆に「この人ダメだ」と思われたら仕事は来なくなります。会社だと、そういうことがどこか遠くの出来事に思えてしまっていましたね。安心やゆとりはありましたけど、今のほうが充実感は絶対的にある。
仕事がお金を稼ぐための手段だった頃
スタイリストの学校に通っていたことがあって、衣服やアクセサリーを作る授業が好きだったというのが、クラフトアートに興味をもったきっかけ。アーティストは食べていけないだろうなと考え、ライターや編集者、WEBデザイナーなどの仕事をしながら、趣味で手芸作品を作っていました。仕事に関してはお金を稼ぐ手段と割り切っていましたね。あとは、WEBデザイナーとかってなんとなくカッコいいし、需要もあるかな、なんて思っていたことも(笑)。少しでも興味があったらやってみるという時期だったのかもしれないな。
その後、企業の事務職をやることになったときも、相変わらずだらだらと作品は作り続けていました。そんな中、オリジナル一点ものなどの手芸ブームが起こったのか、3年前あたりから、展示会で販売していた作品が少しずつ売れ始めたんですよね。自分の作品に興味をもってくれる人も増えてきたので、本気でアーティスト活動をしたいと思うようになりました。
自分より作品が前に出る
最近、ティピやゲルを作ることが多いんですけど、ほとんどの人は、私より作品を先に知る。展示させていただいた会場で自己紹介すると「あぁ、あのゲル作った方?」という感じですね。今はそれでいいと思うんです。作品を覚えてもらって、後から私を知っていただければ。
けれど、私の尊敬するアーティストの方たちはこぞってトークが上手で、作品と同じくらいキャラクターが立っている。トークが上手いと説得力もあって、ファンもつくのかも(笑)、とか考えたりもします。なので、ゆくゆくはトークも上手くなりたいですね。
異文化に触れることで、変化が起こる
現在、東京に住みながら横浜にアトリエを構えているのですが、同じ日本でも文化の違いがあります。
横浜はシンプルかもしれません。アーティストのコミュニティなどもあって、そこに集まっている人たちから学ぶことはたくさんあります。人と人のつながりが強くて、助けられることもしばしば。東京は圧倒的に仕事も情報も人も多いですよね。よく言えば刺激的だけれど、埋もれてしまう感覚もあります。
東京から出ずに作っていた頃に比べると、横浜のアトリエで人や文化を知ってからは、作品が変わりました。考え方の幅や角度が増えるので、アイデアも新しくなっていく。異文化に触れることは、とても重要だと感じていて、これからも積極的にいろんな文化と関わっていきたいです。
今一番行きたいところはメキシコなんです。織物が盛んなので。そこに流れる文化、空気を感じることで、作品を磨くことができると思うんですよね。もっと新しいものを作れる予感がします。
インタビュー トグチダ / 撮影 北原 千恵美
クラフトアーティスト
KAIEさん
「RE:お古」をテーマに、古着や植物をリメイクする。旅で出会った素材を活かし、縫う、編むなど、多彩な技法で作品を生み出す。不定期にワークショップを開催。
10/24-10/31初個展「小さな聖地」を開催。 http://galleryfu.com/exhibitions/402/
HP:http://www.kaieh.com/
Facebook:https://www.facebook.com/kaiehh
「JAPAN FOLK FESTIVAL 2015」HP:http://japanfolkspirit.wix.com/2015
※ KAIEさんの作品が展示されました。