2人でビールを飲んで「お疲れ!」の瞬間
Asian Dining PUERTO
今野 雄二さん
どんなに店が混む日も
2人で店を回していた方がラク。
それってすごいことです。
タイ料理でここまでお酒が充実しているって、珍しいと思いますよ。ドリンクはオーナー兼ホールの鈴木秀平が担当していて、自分は料理担当。料理も種類があるので、カウンターと4~6人用のテーブル3つある店を2人で回してるなんて、我ながらがんばっているなって自画自賛してます。
お客さんから言われるんです。「2人は仲いいね、楽しそうだよね」って。
鈴木のことは、店をやる前から飲食店仲間として知っているから、もう14年来の付き合い。上司であり、パートナーであり、夫婦・・・っていったらあやしい感じになるけど(笑)、言葉に出さなくても通じる仲というか、そんなところがあるんです。
左 パートナーの鈴木秀平さん / 右 今野 雄二さん
もちろん仕事だから衝突しそうなこともあったけど、店が終わったら2人でビール飲んで「お疲れ!」って乾杯して話ができるから、あとくされないんですよね。
混雑して忙しい週末の営業も、2人の方がラクですね。20人~30人のパーティが2つ続けて入るときなんて、たった20分くらいで後片付けと次の準備をします。もちろんお互いに飲食業の経験が長いのもあるんですけど、改めて「俺たちすげえな!」って思いました。
ランチを始めたときなんて、夜の営業が終わって片づけをして、朝日が昇るかくらいの時間に帰宅して仮眠して、また昼の仕込みのために出てくる・・・って感じだったから、お互いボロボロ。でも「慣れるまでの1週間、2人で死のうぜ」って笑い飛ばして、ハイなテンションで乗り切りました。
夏はよく夏フェスとか海の家とかのイベントに出店します。早朝から2人で商品の弁当を大量に作って、よっしゃ、行くぞ!って、炎天下の下で1日中売る。これこそ夏だ!と思いながら楽しんでいます。楽しみを見つける才能だけはお互いにあって、どんなに辛くても笑っていられます。鈴木とじゃなきゃ、ここまでやれなかったですね。
やっぱり店を広げていきたいですし、実際来年くらいにもう一店舗出す計画もあるんですけど、別の店に人入れて動かすとなると当然同じ色は出ないし、それは悩みどころです。
最近、鈴木に子どもが生まれたりして、なかなか2人で飲みに行けてないですね。そろそろ誘ってみようかな。
常連のお客様との記念写真
サービスをする側に従事しているから
逆に感謝されると、すごくうれしい
4年も店をやっていると、大学生だったお客さんが社会人になったり、結婚したり昇進されたりっていうのがあって、店に立ち続けている醍醐味っていうか、お客さんと一緒に時間を重ねて来たんだな、と思えてうれしくなります。
落ち込んだ雰囲気で飲みに来るお客さんもいますよ。でも、おいしいものを食べて、おいしいお酒飲んだら、人間って絶対に気持ちが明るくなるはず。だから、帰り際に笑顔で「ありがとうございました」って言ってもらえるとすごくうれしい。あのお客さん、今日ゆっくり寝られるだろうな、よかったなとか思って、こっちまでほっとします。
いずれ秋田に帰って
鶏でも育てながら店をやりたいですね
18歳で秋田から上京して、今33歳でしょ。あと少しで、生まれ育った秋田で過ごした年月より東京にいる方が長くなります。
高齢化やがん死亡率がワースト1位だとか、自殺者数が多いとか、秋田って明るいニュースが本当にないんです。だからせめても、秋田にはこんなにいい食材があるんだ、豊かな県なんだってPRしようと、お店で出す料理に秋田県産の食材を取り入れるようになりました。
自慢は秋田の由利和牛。あとは、野菜や山菜。今野ファームって自分の実家なんですけど、そこで栽培している採れたてを直送してもらっています。秋田の食材を使ったタイ料理を、東京のお店で出す。ぜんぜん関係がなさそうな3つが結びついているっておもしろいし、もっといろんなことが出来そうだなと思っています。
今の自分があるのは間違いなく秋田で育ったからだし、秋田に恩を感じているからこそ何かしらの形で返したいです。故郷に錦を飾るとか大きなことを言っていいのかわからないけど、いつか・・・そうだな、30年後くらいに、地元で畑やって鶏育てて、同級生が飲みに来るような、焼き鳥屋か何かをやれたらいいですね。
インタビュー 伊藤 紘子 / 撮影 桜坂 卓也
Asian Dining PUERTO
メインシェフ
今野 雄二さん
秋田県出身。高校卒業後に役者を目指して上京し、芸能事務所や劇団で役者の経験を積む。タイやインド料理店といったエスニック系の飲食店で働いてきた経験を活かし、2012年東京・五反田にオープンしたAsian Dining PUERTOのメインシェフに。
Asian Dining PUERTO
http://puerto-tokyo.com/