思いもよらない色に出会った瞬間
イラストレーター・絵本作家
sunsunchildさん
色が色を呼んででき上がる作品
イラストだけではなくて、抽象画の仕事も受けています。抽象画を描くときは、始めに頭を真っ白にすることが多い。理論的な思考が入ると勢いがなくなっちゃう感じがして。何にも考えずに絵具を混ぜたりしながらイメージを膨らませていくんですけど、その際にできた色がすごくいい色になることがあるんです。
「ある人は力強さを感じ、ある人は元気をもらい、ある人は清々しさを感じる抽象画」という発注をいただいたことがあって、すごく悩みました。そういうときに偶然できた色が突破口になって、ぶぁっとイメージが湧くことがあります。作った色をキャンバスにのせると、それに引かれるように色が浮かんでくるんです。その過程で、依頼されたイメージと結びついていくというか、感覚を絵にしていくんです。
恩師に「偶然をコントロールしなさい」と教えられたことがあって、よくわからないこと言うなと思っていたんですけど(笑)、今では少しそういう感覚があります。偶然できた色は、二度と同じ色を作れないという欠点もありますけどね(笑)。
子どもに大うけ
「昌子ちゃんシリーズ」がきっかけ
絵の仕事を始める前は、保育士を4年間やっていました。毎日子どもに絵本を読んでいたんです。ころころと変わる子どもの表情がたまらなく好きでした。
手元に絵本がないときに「お話して」と子どもにせがまれたことがあったんです。そのときにお話をこしらえて聞かせてみたんです。それが好評で、シリーズ化したんですよね。
私、本名が昌子と言うんですけど「昌子ちゃんシリーズ」という安直な名前で(笑)。それと、私が描く絵を子どもたちがベタ褒めしてくれたんですよ。宝物のように家に持ち帰ってくれる子もいて。そういう環境のなかで、絵本作家を目指したいと思うようになり、保育士を辞めて、本格的に絵と物語の勉強を始めました。
いくつもの賞に応募しては落選という毎日を送って、不安しかないときもあります。そんなときは子どもたちのキラキラした目を思い出して、自分を励ましています(笑)。
本当、毎日が勉強ですよ。石ころを見て「子どもはどんな目線で見るんだろう」とか普通に生活していたら見逃してしまうところに絵本のネタは転がっているものです。
いい大人が道端に立ち止まって石を凝視している姿は、不気味ですけどね。小さなことを改めて見直すという作業はそれこそ、私の小さな幸せです。
インタビュー トグチダ / 撮影 北原 千恵美
イラストレーター・絵本作家
sunsunchildさん
大学卒業後保育士として4年間働く。退職後、日本児童教育専門学校にて、絵本、児童文学を学びながらフリーのイラストレーターとしての活動をはじめる。2015年 YAMATOイラストレーションコンペ最優秀賞受賞。