通りすがりの人に声をかけられた瞬間
玄海田公園
大畑 高二さん
「いつもきれいな公園にしてくれてありがとう」と声をかけてもらえると、とてもうれしくて。
私の仕事は、公園管理です。
職場は、横浜市にある玄海田公園。園内には、芝生の広場、運動広場、バーベキュー広場、自然生態圏があり、休日には延べ5000名近くの人が訪れることもあります。
毎朝必ず行うことは、公園内の巡回です。ゴミを拾って、草むしりをし、木の枝の剪定をします。雨がたくさん降った後は、芝生の広場に生えたキノコや運動グラウンドの苔を取り除きます。
ゴミを拾わないでいると、ゴミのポイ捨てが増えて、公園がなんとなく荒んだ雰囲気になる。草むしりや木の枝の剪定をしないと、園内がむさくるしくなりますよね。キノコは子どもが口にするかもしれませんし、苔が生えていれば足を滑らせてしまうかもしません。
公園を安心して気持ちよく利用してもらうためには、毎日の地道な作業が必要なんですよ。
公園の利用者にとっては、ゴミが落ちておらず、草木が手入れされている公園が「当たり前」。だから、私たちが仕事をしていても、あえてお礼を言われることはめったにありません。
だからこそ、たまに「いつもきれいな公園にしてくれてありがとう」と声をかけてもらえると、とてもうれしくて。この仕事をしていてよかったと感じる瞬間です。
公園管理の仕事は「なんでも屋」
公園管理の仕事ってもしかしたら、何でも屋なのかもしれません。ゴミ拾いや草むしり以外にも、「従業員のシフト作成」「会計処理」「樹木の名札の作成と取り付け」「ベンチの修理」「ハチの巣の駆除」など、業務は多岐にわたります。
うちの公園は、サッカーや野球、テニスなどのスポーツができる広場があるので、けが人がしょっちゅう出ます。救急車を呼ぶのもすっかり慣れました。
フリスビーで遊んでいたら、公園管理棟の屋根の上に乗ってしまうこともよくあります。屋根に登ってフリスビーを取るのも、私たちがやるんですよ。
公園管理のスタッフは、ほとんどがリタイア後の高齢者です。外で体を動かすことが多いので、きついと思うこともあります。でも、私はよい仕事だと思っています。
スタッフの現役時代の職業はさまざま。それぞれの特技を生かして働いています。たとえば、溶接の仕事をしていた方は、道具類の修理を頼まれることが多いんです。
ちなみに、私が得意なのは、クレーム対応です。
公園にはさまざまな人が訪れるので、ときには理不尽と思えるクレームをいただくことが非常に多い。でも、私は現役時代に嫌というほどクレーム対応をしてきたので、どんと来いですよ。
公園では、イベントをさかんに開催しています。ウォーキング教室やランニング教室、自然観察会やホタル観察会など、ジャンルはさまざまです。
このようなイベントの企画も、私が担当することが多いです。参加者が喜んでくれるのを見るのはうれしいものですね。
第二の人生を大いに楽しんでいます
私の前職は、コンピューターのエンジニアです。2010年にリタイアし、今の公園管理の仕事を始めました。
なぜ、この仕事を選んだか。
それは、何か社会や人の役に立つような仕事がしたかったからです。
自宅の近くで働きたいとも思っていました。それまで仕事一筋の猛烈社員だったため、今後は地元の人とコミュニケーションを図ることが必要だと感じていたからです。男性はとにかく無口な人が多いし、現役だったころのプライドが邪魔して、地域のコミュニティに入ることが難しい。でも、それではいけないと思っています。
そうそう、サラリーマンを辞めて、まず始めたことは、ヒゲをのばすことでした。現役時代は、銀行や官公庁にたびたび訪問していたので、ヒゲなんてとんでもなかったですからね。
リタイア後にできた膨大な時間を活用して、国家資格も3つ取りました。
第二の人生、楽しまなきゃ損です。自然と触れ合いながら、毎日楽しく過ごしています。
インタビュー 今井 明子 / 撮影 菅井 淳子
玄海田公園
管理責任者
大畑 高二さん
沼津工業高等専門学校卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。大型コンピューターの修理や保守関連業務や、お客様対応に携わる。2010年2月早期退職制度により退職。同年4月より現職。趣味は写真撮影、旅行、テニス。