自己満足だけど、意味のあるポップを書いている、と思える瞬間
ヴィレッジヴァンガード 下北沢店
長谷川 朗さん
ストレートに反応が返ってくるのが、嬉しくて
みなさんご存知の、黄色いカードに描かれた手書きのポップが、ヴィレッジヴァンガード(以下、VV)の核です。
今まで全然売れていなかったとか、ベストセラーでもロングセラーでもなかったような商品を、個人的に好きという想いを込めて、ポップを書く。すると、買ってくれるお客さんがいるんです。
こっちからアピールするとちゃんと反応がある。自分が提案したことに対して、反応出るっていうのは嬉しいですね。リアクションをもらえるところで働いているんだなぁっていうのは、すごく感じます。
VVで一番面白いところは、そこなのかもなぁ。自分で仕掛けて、自分の身でお客さんの反応を感じられるところ。
局所的に攻めるんです。
たとえば、僕、「イット・フォローズ」というホラー映画に最近ハマっていて。今、その映画に関連する小説とかを集めて、ポップをつけてコーナー展開しています。
お店に来るお客さんの100人のうち2、3人は絶対いると思うんですよ。僕みたいに、同じようなハマり方をする人がね。その人の心にコメントが届けば、絶対買いにつながる。まだ今のところは、誰も買ってくれてないですけど(笑)。
自己満足かもしれないけれど、その積み重ねが売り上げにつながるっていうイメージはすごく強い。意味のあることだと思うんです。
もっと、面白いことをやっていければな、って
VV歴は、アルバイト時代を含めて11年。現在勤めている下北沢店が4店舗目です。
下北沢店には、社員が5人いて、店長以外はそれぞれが担当を持っています。僕は、書籍がメイン。本が売れる比重が他の店舗に比べて高いので、力を入れています。
VVで働き始める以前は、小学校の非常勤講師をしていたんです。でも、絵を描く趣味もあって、創作活動と仕事を並行してやっていきたいと思ったんです。それがキッカケにもなって、VVで働き始めたんですよね。
ちなみに昨日も、仕事から帰ってきて、夜中の4時まで絵を描いていました。公募展の締め切りが近くて…。塗り終わった後、ドライヤーで乾かす瞬間が好きなんですよ。濡れていたところが乾いて、マットな感じになっていくところが特にいいんです。
経験を積んで、バイトから社員になって。一番変わったのは、数字を背負うようになったことですね。
普通にやっていても、売上は上がりにくい時代。イベントを組んだり、サイン本を出したりとか、そういったプラスαの仕掛けがないと、数字は取れないんですよね。
僕の仕事人生の中で、これ以上のことはもう出来ないんじゃないかと思うのが、糸井重里さんの事務所と組んでやらせていただいた、ゲーム「MOTHER」のフェア。「MOTHER」のほぼ日手帳を、特別にVVにも卸してもらえたんです。
フェアは2週間あったんですけど、初日の4時間くらいで完売しちゃいました。2日目以降売るものがなくなってしまって。それでも、スタンプラリーや写真撮影で、お客さんが集まってくれました。糸井さんと絡ませてもらった上に、成果も売上に表れて。これを超えることは、今後ないかもしれない。
自分の部屋のような店内。
小説コーナーであらすじを読んでみたり、ね
VVには、特にコンセプトがありません。「遊べる本屋」っていうのがついているだけ。だからこそ、何でも出来る。思いついたこと、面白いと思ったことを、誰に相談するわけでもなく、自分のその場の瞬時の判断で出来るというのは一番の強み。
好きなものを入荷出来るので、店内は自分の部屋感覚。自宅の狭い部屋では難しいことも、店なら出来るんです。いいのか悪いのかわからないけれど、所有物感覚でやるっていうのは、楽しいですね。
これといったコンセプトがなくても、根っこにあるのは、店員が遊んでいるということ。遊んでいる店員がいるところほど、面白い店が出来るものなんですよ。
昔は、VVって、物もないし、お客さんも来ないし、暇で暇で。何をしようか、どうやったらお客さんが来るかとか、止むを得ず考える。もうアイデアで売るしかない、っていうところで、面白い店へとなっていったんだと思います。でも、最近それが出来てるかといったら、一番の課題かなとは思いますね。
だから、今後は、原点回帰。
確かに、会社としてノウハウはプラスになってきているけど、面白さの面ではバカをしていた昔の方が上。本当かどうかわからない、ヤバいものを売ってるという都市伝説があったり(笑)。
そんなお店を目指せるよう、いろんなことにチャレンジしていきたいですね。
インタビュー 百 佐保里 / 撮影 山田 敦士
ヴィレッジヴァンガード 下北沢店
次長
長谷川 朗さん
福岡、新潟、高円寺店を経て、現在は“もはや観光地レベルのVV史上最も狂ってるお店”下北沢店に勤務。
自分にポップをつけるとしたら、「見た目はこんなんですけど、中はすごい真面目です。」
VVオフィシャル: http://www.village-v.co.jp
VV下北沢店Twitter: @vvshimokita