目の前にある”壁”を、子どもたちが超えた瞬間
心温塾
吾孫子功二さん
本当に強くなれるのは、
直面した”壁”を子どもたちが超えたとき
私がささやかな幸せを感じるのは、子どもたちの成長を目にしたとき。辞めてしまいたいという”壁”に打ち勝って、本当に強くなったときです。
一番わかりやすいのは、組手。ずるい子や正直な子、すぐに諦めてしまう子……という風に、組手にはそれぞれの本性が出ます。そして、そのときに痛みが伴うから心も折れてしまう。
『心温塾』は逃げたりずるいことをしている子には、本当に厳しい。小学校ではそれが通るかもしれないけれど、うちではそうさせません。
でも、ただ怒られるだけとなると「通いたくない」という気持ちが生まれます。一旦子どもが「通いたくない」と言い始めると、必ず保護者に負担がかかる。しかし、そこで「じゃあ行かなくていいよ」と言ってしまうと”負け”なんです。そうならないためにもお母さんと連携を図りますが、通いたくないという子どもにやる気が戻ってくるまでが一番大変。本当に”強い子”はごく一部で、生徒みんなが優等生というわけではありませんから。
すんなりと”壁”を超えられる子はほんの一握りで、あとの子には必ず波があります。”壁”にぶつかり、上がって下がっての繰り返し。けれども、その”壁”を乗り越えられれば、折れた心はさらに強くなります。
こういった子どもたちの成長を見ていくのが、ささやかな幸せを感じるとき。空手をやったからではなく、「『心温塾』へ通ったことが、大人になったとき役に立った」と、いつか感じてもらいたいです。道場を開いてから10年経ちましたが、何人そう思ってくれている子がいるのかな。何年、何十年経ってからでもよいので、「『心温塾』に通っていてよかった」と思ってくれたらうれしいですね。
”強くなりたい”気持ちを頼りに、
一人で道場を開いて10年
道場を開いて10年。これまで12年間指導を続けた極真会館(国際空手道連盟極真会館)を抜けて、一人で道場を開いた理由は、単純に”強くなりたい”からでした。
”強くなる”というのは、ただ殴りあうだけではありません。私の場合、大きな組織にいるとどうしても誰かに頼ってしまうため、一人で道場を開こうと決心しました。
今では1日に15〜25人のクラスを3〜4回見ていますが、最初は指導員もたった一人しかおらず、10年経ってようやく高校生や社会人が指導を手伝ってくれるようになりました。
しかし、自分が見てあげないと指導内容が薄くなってしまうところがあります。例えば、自分と社会人が指導するグループで大きな差があると、より楽な方へと子どもたちは逃げてしまう。けれども、それを見て見ぬ振りすることはできません。好きなことも嫌いなことも、一生懸命やらないとダメ。こうやって子どもたちと毎日本気で向き合っているからこそ、とても疲れるんです(笑)。
特に、不真面目な子や波長が合わない子がいて、うまく教えられないときは大変ですね。ご両親が一生懸命稼いだお金を払ってくれているのだから、”月謝泥棒”になることは嫌なんです。だからこそ子どもたちと真剣に向き合い、一つひとつきちんと指導するよう心がけています。
責任感のある子どもたちを『心温塾』から生み出す
最初は泣いてばかりの子も、今では立派に成長しました。
特に、目つきや行動が変わったときはうれしく感じます。家では甘えてしまってできないけれど、『心温塾』に来たら行動や態度がガラリと変わり、ゴミ拾いができるようになるとか。些細なことでもここからスタートして、学校や家でできるようになってくれたらもっとうれしいです。
今後は、こういう責任感のある子をもっと育てていきたい。黒帯も責任感がなければあげられないので、責任感のある子がここから何人育ってくれるのかと期待しています。
インタビュー 釜井 知典 / 撮影 釜井 知典
心温塾
師範
吾孫子功二さん
東京都出身。高校卒業後に一度就職するが1年で退社し、極真会館町田・橋本道場で12年、指導員として活躍。その後、「実戦空手道 心温塾」を一人で立ち上げ、現在では約200人の生徒たちの師範を務める。
≪大会実績≫
◎極真会館 第7回 全世界大会 第4位
◎極真会館 第6回 全世界大会 第8位
◎極真会館 第26.29.30回全日本大会ベスト8
◎第14回極真会館日本ウエイト制大会重量級準優勝
◎極真会館 第6回 全日本学生大会優勝
◎極真会館 城西支部内部試合 優勝5回
他入賞多数
「実戦空手道 心温塾」
住所:
南橋本道場/神奈川県相模原市中央区南橋本2-5-15エレクティオン南橋本1F
小田急相模原道場/神奈川県相模原市南区南台6-17-20
電話:042-700-2789
営業時間:15:00〜23:00(定休日:日曜・祝日)